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第十五回 こんなにも違う日本とアメリカの警察ドラマ

 

よれよれのレインコートは刑事のトレードマーク

ダイヤル110番「この物語はフィクションであり、登場する人物、団体などの名称はすべて架空のものです」と断るのが、ドラマでは当り前なのに、「このドラマは事実に基づいて構成され、資料はすべて警視庁、警察庁、全国警察から寄せられたものです」という、驚くべきナレーションではじまるのが『ダイヤル110番』だった。

『ダイヤル110番』は、1957年9月にスタートした本格的な“捜査もの”の草分け的番組で、現実の事件をリアルに再現していた。生放送の時代に、ドラマの半分近くをフィルムで撮っている。フィルムによるロケのリアリティーと生放送という構成が、ドキュメンタリータッチのドラマとしての緊迫感をうみ、人気があったのだ。 刑事役には、松村達雄、中谷一郎、鈴木瑞穂、加藤武といった、今でこそ名前が知られているが、当時はまったく無名だった俳優が起用されたことも、ドキュメンタリータッチとマッチしていた。57年といえば、緊急電話が110番に統一されたばかりの頃。その告知に功労があったということで、58年6月には、警察庁長官の感謝状が、スポンサーの三菱重工に贈られたとのこと。警察の全面協力番組だったんですね。

日本で最初の本格的刑事ドラマとなると、警視庁捜査一課の七人の刑事の捜査活動を描いた『七人の刑事』だろうね。赤木主任の堀雄二、沢田部長刑事の芦田伸介、杉山刑事の菅原謙二、南刑事の佐藤英夫、中島刑事の城所英夫、小西刑事の美川陽一郎、久保田刑事の天田敏明の七人だ。61年から1話完結の1時間番組として開始されたのだが、その前は菅原謙二と城所英夫を除く5人のレギュラーで『刑事物語』として、2回完結の30分番組として放送されていた。

七人の刑事七人の刑事の中で、最も存在感があったのが、芦田伸介の沢田部長刑事だった。よれよれのレインコートにハンチング。レインコートの前のボタンをはずして、コートのすそを風になびかせて歩く。ドスのきいたボソボソと押しつぶしたような声に、傷痕を残す面構えは、まさしくこれぞ刑事といった感じだった。よれよれのレインコートがトレードマークの刑事コロンボより、芦田伸介が10年も前にスタイルを確立してるんだよ。『七人の刑事』は、たんに犯人を捕まえるだけのドラマでなく、日本復帰前の沖縄問題とか、在日朝鮮人問題とかいった社会的背景や、犯人に対する刑事の人間性、社会的矛盾から発生する犯罪に対する刑事の葛藤など、シリアスな内容となっていた。桜田門界隈の遠景から、旧警視庁の建物がアップになるタイトルバックに流れるZ・デチネの哀愁を帯びたハミング。ドラマと相まって、今でも耳に残っているよ。

 

警察ドラマのいろいろ

 

テレビにおける最初の外国製警察ものといえば『ハイウェイ・パトロール』だったが、同じ製作スタッフの同種のものとして『ハーバー・コマンド』があった。海上犯罪を追求する港湾警察の活躍を描いたもので、モーターボートやヘリコプターを縦横に駆使した水空一体の追いかけ劇が売り物だった。しかし、ロバート・バクスター隊長役のウェンデル・コーリイが地味で、『ハイウェイ・パトロール』ほど印象に残っていない。

それとは逆に、『哀愁』などでお馴染みの往年の二枚目スター、ロバート・テイラーが主演していたのが『ミステリー61』だった。大都会ニューヨークを舞台に、市警の選りぬきの刑事チームが活躍する犯罪捜査ドラマだよ。ロバート・テイラーが部長刑事で、ほかに部下の刑事3人がレギュラーで、彼らの生活と事件を組合せたドラマ展開だった。

ロバート・テイラーといえば、美男俳優としてMGMのトレード・マーク的スターとして活躍したが、この当時は年齢相応に渋さを売り物にするようになっていた。しかし、演技はお世辞にもうまいとはいえず、大根ぶりが目立った。主演のテイラーよりも、若いクリス・バラード刑事役のマーク・ゴダードが、苦味とさわやかさを備えており、いい味を出していたよ。

推理小説ファンなら誰でも知っている、エド・マクベインの同名警察小説のシリーズをテレビ化したのが『87分署』だった。原作では架空都市アイソラの警察分署だったが、テレビでは国際港と摩天楼にはさまれたマンハッタン地区を管轄する、ニューヨーク警察87分署となっていた。もともとアイソラのモデルはニューヨークだから、原作を読んだ人が観ても違和感はなかったんじゃないかな。小説は1956年に発表された『警官嫌い』から、90年の『晩課』まで42冊出ている。同シリーズは数多く映画化されており、黒沢明の『天国と地獄』も、同シリーズの『キングの身代金』が原作だった。私が“87分署シリーズ”を知っているのは、テレビや映画を通してであり、恥ずかしながら原作は1冊も読んでいないんだよ。

さて、テレビの『87分署』に戻ると、スティーブ・キャレラ(ロバート・ランシング)、ロジャー・ハヴィランド(グレゴリー・ウォルコット)、バート・クリング(ロン・ハーパー)、マイヤー・マイヤー(ノーマン・フェル)の4人の刑事の捜査活動が、人種の坩堝であるニューヨークの通りや、風物を背景に展開される。 善良な市民を食い物にするギャングや、殺人者を追う刑事たちの活躍に加えて、彼らの私生活が、いかにも人間臭く描かれていた。特にスティーブ・キャレラと、彼の美しい唖の妻テディ(シーナ・ローランズ)とのやりとりは秀逸だった。 期待して観ていたのに、30回で打ち切られたのには腹がたったね。蛇足ながら、スティーブ・キャレラの声を担当していたのは西村晃だったんだよ。

ミステリー61 ロバート・テイラー 87分署 左から2番目がスティーブ・キャレラ
ミステリー61
ロバート・テイラー
87分署
左から2番目がスティーブ・キャレラ


 
資料提供 : Nostalgic World
 
次回は「憶えていますか?こんなTV番組」を掲載します。お楽しみに!

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コメント

日TV「ダイヤル110番}は、家族みんなで見ていました。子供心には大変怖くてパトカーのサイレンの音が印象的でした。また、「7人の刑事」ちょうさん事芦田伸介の演技には。いま思い出しても大人を感じます。これ以来、刑事役では、ちょうさんが定番になったと思います。

投稿者 高橋昇 : 2007年07月02日 15:21

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