恐怖のミイラ
もの凄く怖かった想い出のある作品に『恐怖のミイラ』があった。連続テレビ映画としては、日本で最初の本格的ホラーで、ミイラに対しては強い印象が残っていたが、内容は殆ど憶えていなかった。CATVのキッズステーションで放送された時にノスタルジックな気分で観直したのだが、これが結構イケル。現在からみればトホホの内容だが、何故かハマッてしまったのだ。
第1話(闇に光る眼)
ブキミな音楽とともに、レンガ造りの建物に、歩いていくミイラの影が映り、出くわした女の悲鳴で始まるタイトルは、記憶のままでした。ただ、気絶する女性はもっと美人だと思っていたけど、どこにでもいるお姐ちゃん。私は女性を美化して記憶する傾向があるのかなあ。法医学を大学で学んでいる雄作青年(松原緑郎)が、姉(若杉嘉津子)の頼みで姉の家に同居することになる。姉の夫・板野博士(佐々木孝丸)は考古学の権威で、家族にも内緒で助手の牧村(真弓田一夫)と毎夜遅くまで秘密の研究をしていた。その研究とは、発掘してきたミイラを生き返らすことだった。二人の研究は完成し、ミイラは再生するが、博士を殺し研究室から姿を消す……。当時は気づかなかった(出演者の記憶は全然なかった)けど、宣弘社の作品にしては出演者の顔ぶれがいいんですね。主演の松原緑郎は、新東宝のニューフェースとして期待されていましたが、会社が倒産してテレビに活躍の場を移したんですね。だけど、その後パッとしなかったなあ。若杉嘉津子は新東宝のスターでした。主演作も多く(中川信夫監督の『東海道四谷怪談』での“お岩さん”が最高)、最近スチール本も出版されています。佐々木孝丸は、映画でお馴染みのバイプレイヤー。たいてい悪役でしたね。真弓田一夫は地味ですけど、当時のテレビドラマには欠かせない味のある役者さんでした。彼ら以外にも、博士の娘・なぎさ役で三条魔子が、雄作の先輩の法医学者役で舟橋元といった新東宝出身の俳優が出演しています。
第2話(幽鬼の眼)
助手の牧村はミイラを捕えるが、ミイラは檻を壊して牧村を殺し、夜の街をさまよう。博士殺しの捜査をしている警視庁の青井部長刑事(高木二朗)のもとに、次々と殺人事件の連絡が入ってくる……。ミイラが“13日の金曜日”のジェイソンみたいに手当たり次第に殺していくんですね。冒頭のタイトルシーンは、この回の一場面です。この回までで7人殺すんですよ。殺した相手の上着やコートを着て目立たないようにするなんて、頭がいい(?)んです。
第3話(ミイラの秘密)
雄作は連続殺人が博士の研究に関係あると考え、手掛かりを求めて博士の書斎を調べる。そして、中身がくり抜かれた本の中から博士の研究メモを発見する。それには驚くべきことが記されていた……。今から4000年前の古代エジプトにおいて、パトラ女王の命令で不老不死の研究をしていたヒミタが薬を完成させる。姫に恋心を抱く息子のラムセスが人体実験をかって出てその薬を飲むが、薬の副作用で顔が醜く変形し、仮死状態となる。怒った女王は、回復薬を与えることなくラムセスを埋葬してしまう。回復薬があればミイラは再生することを発見した博士は、その秘薬の研究をしていたのだ。パトラ女王となぎさが瓜二つなんですよ。過去と現在の女性がソックリというのは、B級ホラーにはよくあるパターンですね。それにしても日本人とエジプト人ではムリがあるよなあ。それと、記憶ではパトラ女王はもっと妖艶な感じがしたんだけどなあ。
第4話(墓場の怪人)
研究室へ回復薬を取りに戻ったミイラは、なぎさの寝顔にパトラ女王の面影を見出すが、薬を手に入れただけで何もせずに立ち去る。怪しい物音に気づいた雄作がミイラの後をつける……。ミイラの崩れた顔が回復薬を飲んで、少しづつ元の顔に戻ってきます。しかし、薬がきれたら再び崩れた顔になることを予感させます。ミイラはなぎさを狙い、雄作がなぎさを守ってミイラと闘う、という先の読める展開になってきました。
第5話(恐怖の定期便)
雄作からミイラのことを聞いた青井部長刑事は、雄作が見失った辺りを警察犬を使って捜索する。そして、ミイラが隠れていた洞窟を発見するが、ミイラは国道を通るトラックに乗って脱出したあとだった。トラックの荷台に隠れていたミイラは運転手に見つかり彼を殺害する。警察はミイラを発見するが……。それにしてもミイラのモンタージュ写真には笑ってしまった。マジメに作る警察にもね。回復薬を飲んだせいか、ミイラの行動の素早いこと。4000年前の人間とは思えないよ。日本語もちゃんと理解しているみたいだし……。
第6話(間違えられた男)
地下道を通って警察の追跡をかわしたミイラは、サブというチンピラに、待っていた外人と間違われ、サブの車で東京に戻る。サブはギャング団の一味で、ミイラは金庫破りのプロに間違われたのだった。ギャング団は、大会社の4千人分の給料を奪う計画をたてていた。ギャング団のアジトでミイラがひとりで留守番している時、本物の金庫破りが訪ねてくるがミイラに殺される。一方、警察はミイラが隠れていた洞窟で回復薬を発見し、薬を調べた結果、ミイラが生き返った確証をつかむ……。サブ役で牧冬吉が出演。宣弘社の作品なんだから、やっぱり彼が出ないとね。新東宝の残党ばかりじゃあね。残党といえば、ギャングのボスの情婦役で三原葉子が出ているではありませんか。三原葉子といえば新東宝のエロチカル・クイーン。彼女の出演シーンは全然記憶になかったなあ。エジプトの女王は、記憶ではもっと妖艶な気がしたんだが、三原葉子と混同していたのだろうか。回復薬の効果でミイラになる前の状態に戻っていたミイラの顔が、本物の金庫破りとの格闘中に、突如不気味な顔に崩れるというショック演出にはニンマリ。ホラー・ファンにとって、こういうシーンが嬉しいんですよ。
第7話(恐怖のビル街)
ミイラは金庫破りの死体を電気屋の小型トラックの荷台に捨てる。しかし、発見された死体がラジオの臨時ニュースで流され、それを聞いていたギャング団は、自分たちの仲間が偽者であることに気づく。ギャング団のボスは、ミイラを金庫破りの犯人に仕立てることを思いつき、ミイラを連れて金庫破りをする。ミイラを殴り倒すつもりが、逆にミイラにボスと子分のひとりが殺され、ミイラはボスの情婦と金を奪って逃走する……。前回から船床定男が共同監督(第5話までは田村正蔵の単独)として加わるが、演出が雑になったような気がする。前回で顔の崩れたミイラが、この回では元の状態に戻っているし、ギャングに拳銃で撃たれて、また突然顔が崩れるという、前回の二番煎じ演出をしているんだもの。ミイラというキャラクターからくる怖さがだんだん薄れていくなあ。
第8話(雷鳴に消えた女)
ミイラの隙を狙って金を奪おうとした女はミイラに殺され、サブは警察にミイラの居所を知らせる。しかし、警察が駆けつけた時はミイラが逃げ出した後だった。ミイラが奪った金は紙幣番号が控えてあり、乗ったタクシーからミイラがホテルに泊まっていることをつきとめる……。三原葉子さんは、アッサリ殺されてしまい、たった3回でお役御免。物語を意味なく延ばしている感じだね。やっぱり、この辺は子どもの頃見てないや。「200万都民を恐怖に陥れる」なんてセリフが出てきたけど、当時の東京の人口は200万人だったんだ。
第9話(実験台のミイラ)
警察の先回りをして、サブはミイラを襲うが、拳銃ではミイラを倒すことができず、逆に殺されてしまう。警察はミイラを追いつめ、催涙弾の攻撃により、やっとミイラを捕える。ミイラは東都大学の実験室に収容されるが……。警官隊の一斉射撃でもミイラは死なず、ホテルの屋上から飛び降りてもなんともない。不死身なんですね。というより、死体が動いているといっていいかな。死体らしくないのがトホホ。
第10話(瀕死の逃亡者)
麻酔薬で眠っていたミイラだが、雄作青年と様子を見に来ていたなぎさの気配で目を覚まし、金具を壊して実験室から逃亡する。回復薬の効き目がきれはじめたミイラは苦しみだし、身体を休めるために民家に押し入り、その家の少女を人質にとる……。この回から田村正蔵の単独監督となり、ミイラの動きなどに演出タッチの変化がみられる。前回までは、共同監督の船床定男が演出していたんじゃないかな。それにしてもセリフが陳腐で笑ってしまう。どんどん内容が悪くなっていくよ。
第11話(迫り来る足音)
凶暴性を鎮めるために用意した回復薬をミイラが飲んでいる間に、少女を救い出すことに成功するが、元気になったミイラは警察の包囲網を破り逃走する。しかし、警官隊の攻撃で回復薬を入れたフラスコが壊れ、薬を全て失ったミイラは板野博士邸に向かう……。この回は記憶にありますね。親戚のお婆さんのお通夜の晩に観たんだ。警官が後から忍び寄ったミイラに襲われるシーンは、もっとうす暗かったような気がしてたんだけど。あまりに明るい映像なんで恐さが伝わらない。当時は部屋の灯りを消して観ていたので、今からみると「な~んだ」と思えるシーンでも、結構恐かったんですね。
第12話(姿なき恐怖)
警官を殺して博士邸に侵入したミイラは、回復薬の製造を記したパピルスを奪い、天井裏に身を隠す。そして、なぎさを誘拐して逃走する……。屋根に上がったミイラが警官隊のサーチライトに照らし出されるシーンは憶えていますよ。ホラー映画の定番シーンだけど、これがゾクゾクするんですね。暗闇の中から、パァーっとミイラの不気味な顔が映し出される。ヘタな演出ですけど、当時のテレビ映画としてはこんなものでしょう。
第13話(秘薬の調合)
ミイラは、なぎさに回復薬を調合させるため、古寺の楼門の上に閉じ込める。調合する薬を求めてミイラが薬局を襲っている間に、なぎさは自分が囚われていることを書いたメモを外へ放る。ちょうど犬と散歩にきていた少女がそれを見つけ、雄作と警察が古寺へ駆けつける。雄作が囮となってミイラを誘い出し、催涙弾攻撃によってミイラを倒すことに成功する。回復薬の効果がきれたミイラは死んだかのように思えたが、新聞記者のカメラのフラッシュで再び起きあがる……。ご都合主義のストーリー展開にはトホホ。雄作とミイラのダラダラした追いかけっこにもトホホ。物語に脈絡がなくなって、完全に破綻しているなあ。
最終回(ミイラの最後)
警察の包囲から脱出したミイラは、回復薬を求めて板野博士邸へ向かう。板野博士が残した研究メモをもとに、東都大学の小泉博士が回復薬を完成しており、ミイラの凶暴性を鎮めるために博士邸に届けられていた。ミイラはなぎさの前に姿を現すが、なぎさはミイラに永遠の眠りにつくように諭し、回復薬を捨てる。かすれる意識の中で、ミイラはなぎさにパトラ女王の意思を感じ、静かに床へ横たわると身体が崩れはじめ、塵となって消滅した。もっと何かあるかと期待したけど、結局、薬がきれて最後を遂げるという全く盛上がりのないラストだった。
最初の頃のミイラの不気味さだけが記憶にあって、後は殆ど憶えてなかったのは、終わってみればやっぱりトホホ作品だったからですね。この物語の最大の欠陥は、ミイラの行動に目的がないことですよ。ミイラの行動が行き当たりばったりなら、ストーリーも行き当たりばったり。これじゃあ、面白くなるわけがないですよ。お馬鹿ドラマとして、笑わしてもらいましたけどね。ミイラになったバブ・ストリックランドという外人さん、他では見たことがないけど何者だったんでしょう。
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