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第三回 「色気が足りない」

(文) 海風亭世の介
 

しかし民主党の永田の野郎も往生際の悪いやつだったな。だいたい物事の終わりにそいつの本性が出るな。会社の辞め方、女との別れ方、離婚の仕方。辛いからこそ、そこでどんだけやせ我慢ができるかってことだ。その最たるものは死に方だろうな。おいらは棺桶の中で閉じたまぶたの上からマジックで目を描いてもらおうと思ってるんだ、ベティさんみたいな。鼻毛も描いて、前歯も1~2本黒く塗りつぶしてな。司会者が“さあ、故人に最後のお別れを”とか言って、泣きながら覗き込んだ友人や昔の女たちが思わず吹き出すっていう寸法さ。
あいつは死ぬ間際まで大馬鹿者だったね、と思われたら遊び人としては本望だ。

イメージさ、本題だ。と言っても大したこたぁないけどね。先達てちょいとヨットで熱海沖の初島まで遊びに行ったんだ。見かけはたいそう立派なホテルがあってゴージャスなんだけど、色気がないんだな。レストランはみんな9時ころ終わっちまうし、朝飯は学食みたいだし、スタッフもなんかマニュアルっぽいんだ。リゾートホテルって気持ちをぐらっとさせるところだろ。あれじゃぁ都会で遊びなれて、少々物事を見てきた大人にはつまんねぇだろうな。日本旅館だって着いた早々朝飯は何時にするかだの、門限があるから早く帰れだの、うるさいったらありゃしねぇ。気の利いたワイン一本もおいてないくせに。まあ、ホテルや宿を責めるのは酷なんだが、問題は六本木ヒルズや最近の丸の内だ。見かけは立派だけどなんか硬くて、乾いてて、冷たいんだな。豪華なだけで空気に色気がないんだ。どこかの大きな資本が再開発とかいう名目で四角四面で表面だけはピカピカのたいそうな入れ物つくって、そこに有名ブランドが入居する。というか家賃が高いもんだから有名ブランドしか入れねぇ。レストランなんかその家賃から逆算するから客単価上げるために料理に無理やり余計な手を加える。そこに小金を持った小利口で小奇麗な人間ばかりが集まってくる。システムと効率と経済だけがすべてを支配して、風情も情緒も色気もあったもんじゃねぇ。盛り場ってぇのは清濁併せ呑んだ人の営みがうごめく場所だ。柔らかくて、濡れてて、温かい場所だ。楽しいこと、悪いこと、きれいなこと、醜いことがない交ぜになって、そこに色気が生まれるんだ。そうかと思えば電車の中吊りには年端もいかねぇ若い娘が半裸で寝そべった写真が溢れてる。大人の色気が街からなくなって、幼稚な猥褻が大手を振ってる。まあ誰が悪いかといえば、俺たち大人が悪いんだけどな。

何だか今回は愚痴っぽくなったな。まあ“ぶつくさ日記”だから勘弁してくれ。さあ今夜は野郎の友達とこの先の浜で焚き火だ。長崎からいいからすみ送ってきたんで、それつまみにウィスキーかな。色気も何もないけど、それも気楽でいいんだな。(おわり)



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