| (文) スポーツジャーナリスト・白髭隆幸 |
| 協力:SPORTS 21 |
8月19日から広島、浜松、仙台、札幌の4会場で第15回世界バスケットボール選手権が開催されています。8月26日から9月3日までは、埼玉のさいたまスーパーアリーナで1次ラウンドを勝ち抜いたベスト16によるファイナルラウンドです。 広島で1次ラウンドを戦った日本代表は、パナマに78-61で勝ったものの、ドイツ、アンゴラ、ニュージーランド、スペインに敗れ1勝4敗、グループ B5位で終わり、残念ながらファイナルラウンドに駒を進めることができませんでした。 バスケットボールという競技は、身長や身体能力などが直接プレーに影響するところが大きなスポーツです。アイスホッケーやラグビーなどと同じように、身体接触があることなど日本人にとって最も苦手とするタイプのスポーツなのかもしれません。しかし、そこを工夫して、なんとか世界の上位を狙うのが日本スポーツ界永遠の命題です。 バスケットボールは、学校体育では必須競技ですし、どこの学校でもクラブ活動で盛んに行われています。それだけに親しみのある競技ですが、世界との差は歴然です。男子はアジア予選を勝ち抜いてオリンピック本大会に出場したのは1976年のモントリオール大会が最後。アジアでは中国、韓国などの後塵を拝してなかなか世界の桧舞台に立てないでいるのが現状です。 そのため、マスコミから注目を浴びることも少なく、競技自体の面白さや実際にプレーしている競技人口の多さに比べ、マイナースポーツ化しつつあるのが現状です。 しかし、かって日本女子は1976年のモントリオール・オリンピックで5位に、1996年のアトランタ・オリンピックで7位に入賞。1975年の世界選手権では2位に入ったことがあります。高さには、速さと組織力で対抗できることの証明でした。 男子も1956年のメルボルン大会から1976年のモントリオール大会まで6回のオリンピック中5回出場と、世界レベルにあった時期もありました。そこで沼田宏文、北原憲彦など大型プレーヤに混じって活躍したのが、身長1m86の谷口正朋さんでした。 谷口さんは中大杉並高校入学後にバスケットボールをはじめ、中大、日本鋼管で活躍したプレーヤーでした。高校3年の時、日本代表に選ばれ海外遠征は54回。長きにわたって日本チームを牽引しました。主将として出場した1972年ミュンヘン・オリンピックでは14位という成績に終わったものの得点王に輝いています。まだ「3点シュート」というルールができる前のことです。 その谷口さんの個人練習を見たことがあります。ハウツーものの撮影に行ったついでのことだったと思います。川崎にある日本鋼管の体育館で、谷口さんは1人で黙々とリングに向かってボールを投げていました。 練習の前に「何本くらいシュートするのですか」と聞いたところ、「だいたい1日で1000本を目標にしています」という答え。「お1人でするのですか。サポートの方は?」と尋ねると、「もちろん1人ですよ。球拾いなんて必要ないですよ」。そりゃ、大変だと思ったのですが、練習を見て納得しました。 谷口さんが放ったシュートは、きれいな放物線を描いてリングにも触れずノータッチで床に落ちます。そうするとドライブのかかったボールは、投げた谷口さんの方向に自然にバウンドしながら戻ってくるのです。 そうしたボールが1000本中980本くらい。結局、リングに当たったりバックボードに当たって、あさっての方向に飛んだのは20本くらい。本当にシュートの正確さには舌を巻きました。 現在の日本人プレーヤーで、毎日1000本シュートを練習している人はいるのでしょうか。そして980本をゴールに決めるプレーヤー。現在のように3点ルールがあればロングシュートが得意だった谷口さんのことです、2倍くらいの得点はあげていたでしょう。 谷口さんはサウスポーシューターとして有名でしたが、じつは右利きだったそうです。幼稚園のころ右手に火傷をおい長い間右腕に包帯を巻いていて、左手で生活をするようになったとのことです。火傷が完治してからは、すっかり左利きになってしまい、今度は左手に包帯を巻いて矯正し鉛筆や箸は右手で持つようなりましたが、ボールを投げたりすることは左利きのままだったそうです。そういえば、野球の王貞治さんも右利きを左投げ左打ちにしたという話を聞いたことがあります。 谷口さんは引退後、日本バスケットボール協会の専務理事として、JBL指導者研修、JBLバスケットボールドリームプロジェクトなどで後進の指導につくしています。 谷口さんのような天才プレーヤーが再び登場すれば、低迷する日本バスケットボール界の起爆剤になるでしょう。すでにbjリーグというプロバスケットボールがスタートしていますが、来年度にはいよいよ日本バスケットボール協会主導のプロリーグが立ち上がるようです。 五十嵐圭や双子の竹内公輔、竹内譲次ら新しい選手も登場してきていますが、谷口さんを凌ぐ得点力ある選手は登場してきていません。 せっかく日本で世界選手権を開催しているのに、今一つ盛り上がりに欠けたのは残念でした。やはり、ある程度(ベスト16入りくらい)の開催国の活躍が、こうしたイベントでは必要不可欠です。NBA挑戦中の田臥勇太を含め、谷口さんを越える日本選手が一日でも早く出現するよう願うばかりです。 |
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