| (文)上海工商外国語学院 客員教授・中本 洋 |
| 10年ほど前までの「中国旅行ブーム」の時、中国に行った多くの日本人が一様に驚いたのは、レストランでも駅でもホテルでもデパートでも、トイレの汚さでした。「トイレさえ綺麗だったら、また中国に行くのに」という人が大勢いました。ドアは閉まらない、大便の隔壁がない、とにかく不潔……。中国ファンを自負していた私も、さすがにいつも嫌な気持ちになったものでした。「他の中国人と並んで大便が平気で出来たら中国通」などという冗談もいわれました。中国のトイレの汚さを私はずっと「お金がないから手が回らないのだろう」くらいに考えていました……。
ところで、4年ほど前、上海の浦東地区に三越デパートとダイエーを合わせたような豪華な7階建ての“スーパー”が出現しました。開店前の宣伝も大掛かりで、上海市民の注目を一身に集めていて、私達夫婦も「どんなスーパーなのだろう」と好奇心満々で行きました。溢れる人の群れに押されて、新しい店内を歩き回りましたが、高級ブテックが勢ぞろいし、高級車も展示されていて、「さすが高度成長中の上海」と感心しました。ところで、途中、妻が一階のトイレに行きました。多くの人がそこへ行っています。私は待っていました。何分かすると、妻があたふたとこちらに足早に歩いてきて、「すごいトイレよ!」といいます。「どうしたの?」と私。「トイレの数は沢山あるのだけれど、ドアが壊れているものや、無い物、それに、鍵の無い物もある。ひどいのは入っているのにドアを閉めない人がいる。とても使えないわ」。私は「中国らしいなあ」と苦笑するばかりでした。 「人に見られる外面は飾りまくるが、見えない内のところは手を抜く(金をかけない)」という中国人の国民性を、これほど如実に表した“事件”はありません。また、10年ほど前までの有名な話があります。「工場などで、中国人の労働者は監督がいれば働くが、いなくなるとすぐ手を抜いてサボり始める」、しかし「日本人は監督がいなくなっても同じ様に一生懸命働く」。中国人は日本人労働者の態度に驚嘆したといわれています。 外面を大事にするといえば、お土産の派手で大きいこと。しかし、どんな素晴らしいものかと中を開けてみると、小さいものがちょこんと入っていることが多かったですね……。ある時、上海人の友人に贈り物をしました。それは高価なハンカチでしたが、小さいものなので、一瞬相手が「ふん」といった表情になったのを私は見逃しませんでした。「そうか、大きなものが良かったのだ」と思ったが後の祭り。 ところで、この春、日本留学一年目の春休みに上海に帰ってきた教え子が、我が家に来て、「日本の学生には感服しました」といいました。「へえ?」と思って聞くと「日本の大学生はアルバイトなどに一生懸命で、余り勉強しませんね」とちょっと苦笑いしながら「日本人の学生は試験で分からないところがあっても、白紙のまま堂々と提出します。落第かもしれないのに。中国人ならなんとかカンニングするのですが」。私は彼の驚きぶりに大笑いしましたが、「日本人の潔さ」に感嘆する彼の気持ちはよく理解できました。 かつて江戸時代など、粋な江戸っ子は裏地に凝り、わざと見えるところを目立たせなかったものでした。また、金貸しなどは相手の家に行ったとき、必ずそっとトイレに行き、清潔であったなら金を貸した、といわれています。このような日本人の“内を尊ぶ美徳”を中国人の学生に話しても、彼らは理解しがたい顔をしています……。 |
中国に行った事のある人に聞くと、トイレの話は必ず聞きますよね。例の国営の遊園地などを見ると、“内を尊ぶ美徳”は、なかなか、理解してもらえない気がします。
投稿者 金太 : 2007年05月16日 09:58