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第五回 フライライン&その他ラインの歴史

(文) FLYの達人 渡辺 隆 
 
現在は化学繊維全盛の時代ですが、古くのラインはホースヘア (馬巣)が、その中心的存在であったのが、時代の変遷とともにシルク(絹繊維)へと変わり、現在のナイロン系化学繊維へと変化してきたのです。

フさまざまなフライライン
さまざまなフライライン
ロッドの項目で記述した15世紀の英国では、かのジュリアナ・バーナーズ修道院長は、白い馬の尾で、長い物よりは真円形に近い物を最良のものとしていたようです。大西洋サケを釣るには12本の糸を撚って作り、レインボートラウトやグレーリング等の鱒類を釣るには9本撚り、もっと小型のパーチには4本撚りを、さらに小型のディースには2本撚りのホースヘアを用意するという魚種別の重量にあわせて分類していたようです。更にはホースヘアを20本、15本、10本と撚り付けテーパー状に繋ぎ合わせてロッドの長さに合わせていたようです。これらのラインには草花を素材とする染色技術を用いてカラフルな色、イエロー、グリーン、ブラウン、ベージュ、ラスト、ダスキーの順に染め上げていたと書物にはあります。通常ならばそのままの状態で活用するであろうヘアーを色染めまでしているのです。かなり釣りにのめり込んでいる状況が分りますね。

この当時、他の素材があったかというと、英国の文献にはガットがラインとして紹介されています。その他には中国製のシルクがあったと思われますが、シルクが登場するのは19世紀になってからになります。「ガット(Gut)」は弦楽器の弦として利用され、かなり古くから利用されていたと思われますが、水分に弱いという性質があります。このガットは「腸」という意味で、人類最古の家畜といわれている羊の内臓である腸の腸線を乾燥させて作られています。意外と長く伸ばすことが可能なようで、体調84センチの羊は約31メートルの腸を持っているというのがハム、ソーセージの文献にありました。そのため水中では使用できませんが、水面上でフライを躍らせて利用することはできるので活用されていたのではないかと推測するのです。

この後に出現するのがシルクです。シルクはご存知のように細くしなやかで伸びも無いため、これを撚り付け編み込んで長いラインの製作ができるようになったのでしょう。これに動物性の油脂を塗布して浮かせる工夫もしたのです。中国からシルクロードを通りヨーロッパに渡ったシルク繊維は長いこと活用されていなかったようですが、需要と供給の関係か、シルクをラインに活用するにいたった経路は判明しませんが、やっと日の目を見たに違いありません。長いラインを収納するため、リールも開発されました。シルクラインの出現で飛躍的にフライフィッシングが発展したといえます。

フライラインを特集した雑誌とライン各種
1950年代になると現在利用されている化学繊維のフライラインが登場してきます。コア(core、芯材)部分にナイロンやダクロン素材を編み上げたブレイデッド・コアを利用し、その周囲をPVC(ポリ塩化ビニール)でコーティングしたものが現在、主流となっています。が、各ライン・メーカーによってその呼び方や素材の利用法もさまざまです。巻き癖がつきにくい、巻き癖が速やかに取れる、柔軟剤、浮力材を封入したタイプのもの、耐久性を高める素材などを配合するなど、それぞれのメーカーが特徴を持たせています。目に付きやすいフローティング・ラインには、視認性を高めるためカラフルなピンクやイエロー、ライムグリーン、オレンジなどの色に染色されています。フライラインの特徴等はここでは紹介しません。使用するにはさまざまな文献で紹介されていますのでご覧下さい。古いタイプのラインは、ラインとフライ(毛鉤)を結ぶ部分が一体形になっていましたが、現在はラインの先にリーダーを取り付けてフライを結んでいます。このフライを結ぶ部分をティペットと呼んでいます。このリーダーも元が太く先細りのテーパー状になっていて、テーパーリーダーと呼ばれています。ラインと同様に先細りのほうがフライを狙った位置に正確に投射することができるように工夫されています。先端部分のティペットはモノフィラ(単繊維)です。

ちょっと脱線しますが、本邦で釣り糸として利用されていたのはテグスです。このテグス(テングスとも呼ばれる)は楓蚕(ふうさん、てぐすさんとも呼ばれる)、山繭蛾(やままゆが)の幼虫が繭になるために出す繭糸を酸に漬け、引き伸ばし乾燥させて作った糸でシルクはこの一種と呼ばれています。

※次回はフライタイイングの歴史について記述します。

 

国内外の釣り場事情
ヘンリーズフォーク・リバー(Henrys Fork River)
 
北米大陸を縦断するロッキー山脈の北西部にイエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)があります。この公園はアイダホ、モンタナ、ワイオミングの三州が接する位置にあり、フライフィッシングの盛んな土地でもあります。

公園の西玄関の町、モンタナ州のウエスト・イエローストン(West Yellowstone)の町からそのまま西へルート20号線を進むと、大陸分水嶺のターギー峠(Targhee Pass)を越えアイダホ州へと入ります。峠を下ると右手にヘンリーズフォーク・リバーの最上流部にあたるヘンリーズ・レイク(Henrys Lake)を見ることができ、ここから20号線は南下します。アウトレット(吐き出し口)部分と交差し、放牧されている牧場沿いの道を進むと、マックスイン(Macks Inn)と呼ばれる地点で再び川と交差します。

ハリマン・ステートパーク内
ハリマン・ステートパーク内
ここはビッグ・スプリングス(Big Springs)と呼ばれる湧水量毎分6万ガロンを誇る湧水地の下流域で、ここを過ぎると道路はアップダウンを繰り返し平らな大地の上に出ます。このフラットな大地の西側は川を堰き止めて建造されたアイランドパーク・ダム(IslandPark Reservoir)が満々と水を蓄えています。ダム下は大地を切り取ったような箱のような形状で、その形状からボックス・キャニオン(Box Canyon)と呼ばれている釣り場で、底の平らな釣り用のドリフト・ボート(Drift Boat)専用区間。箱型形状から抜け出るとボートを引き上げる場所があり、ここから釣りの核心部が始まります。

大地をさらに南下しバッファロー・リバー(Buffalo River)に掛かる橋を渡ると道は下り、ヘンリーズフォーク・リバーの左岸沿いに出ます。ここがラストチャンス(Last Chance)の町。モーテルとわずかな住宅が点在する小さな町ですが、釣りの最盛期には住人よりも川に立ち込む釣り人のほうが多いと想うほど,人で溢れています。マイク・ローソンのヘンリーズフォーク・アングラーズ(Mike Lawsons Henrys Fork Anglers)、レネ・ハロップのトラウト・ハンター(Rene Harrops Trout Hanters)等有名釣り人の銘を冠したフィッシングショップを含め数点のショップがあります。

パーキング横のお立ち台から見た
パーキング横のお立ち台から見た
ヘンリーズフォーク
川沿いには立派なパーキングがあり、さまざまな地方から来る釣り人の車で溢れ、ナンバーも色とりどりです。このパーキングから下流のオズボーン橋(Osbone Bridge)までの区間はハリマン・ステートパーク(Harriman State Park)内で、ベストポイントといわれるボーンフィッシュ・フラット(Borne Fish Flats)、ザ・ランチ(The Ranch)等の名称のついた場所があります。水表面の流れは緩く見えますが、水流が巻き、フライをストレートに流すには高度なテクニックが必要な場合もあるようです。

釣り可能区域はさらに下流域のローワ・シープフォール(Lower Sheep Falls)までの区間で、ここまでがキャッチ・アンド・リリース区間となります。この下流域にはさらに大きな滝があり魚体がそこを移動することはできません。20インチを超える特に大型のレインボートラウトを狙うには6月末に出現するグリーン・ドレイクの時期とホッパーを使う初秋の頃がお勧めです。この川を初めて知ったのは、山と渓谷社出版の季刊誌“OUTDOOR(アウトドアー)”誌で特集を組まれているのを読んだからで、その当時は“フライフィッシングの聖地”としてヘンリーズフォーク・リバーは捉えられていました。今でもそうかもしれませんが…。

「一度はフライフィッシングの聖地に行き釣りをしてみたい。」と思っていました。それが実現したのは1981年の初夏、故芦沢一洋氏主催の“イエローストーン・ツアー”で“10日間の海外釣りツアー”だったのです。初めて訪れた時の感動は忘れられません。その後、2001年に釣りの仕事をやめてるまでの約20年間、毎年釣行し、釣りまくりました。が、常時、釣れている訳ではありません。結構、辛酸を嘗め釣れないことも多々ありました。釣り場の傍に釣りショップがあると便利な物で、その時期につれるフライは常時陳列販売し、さらにガイドサービスや釣りのライセンスは各ショップで購入できま、私の大好きな場所のひとつです。
 

アウトドア&フィッシング ナチュラム

コメント

ラインにもこだわりと、ちょっとしたお洒落なところがあったんですね。現代は機能だけを優先してしまいそうですが、昔の貴族はラインカラーでも楽しんでるように思えます。心にゆとりがあるんですかね。それに、今でも高価なシルクラインを、昔から使っているフライマンは高尚な趣味?贅沢者?なんですね。フライの歴史って面白いです。次回も楽しみにしています。

投稿者 荒井秀文 : 2007年02月01日 21:07

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