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第六回 断食修業のこと ~後編~ 

 
エッセイスト 中尾伊早子


はじめに

むかしむかし、日本の人々は、自然と共に暮らしていました。
おじいさんは山へ柴刈りに行き、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
山には森があり、水が湧き、木の実やキノコ等の食べ物があり、植物は薬になるものもありました。木は家を建てる材木になり、火を焚く燃料にもなりました。
今のように、スイッチ一つで電気がつき、蛇口をひねれば水が出るという生活ではありませんでした。
 人間が生きるために必要なものを与えてくれる山=森にはきっと神様がいらっしゃるのだと人々は思いました。だから、田畑を耕す為に森を切り開いても、必ずその一部を残し、感謝をする場所として、長く守りつづけてきたのです。
 「鎮守の森」とは、そうして自然に生かされていることを知っていた古の人々の智慧によって守られてきた大切な場所です。
今も、全国に残る鎮守の森。
神社とはなんなのか、そこで行われるお祭りにはどんな意味があるのか…そこには、四季があって、自然豊かな国だからこそ生まれた〝日本がもっと好きになる〟物語がたくさん詰まっています。そんな物語を一つ一つ紐解いて、お伝えしていきたいと思います。


 

奈良県吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)今回は3年前の3月26日〝結婚15周年記念〟に夫婦で断食修業に参加したときの体験談の後編です。場所は、現在世界遺産となった奈良県吉野の金峯山寺(きんぷせんじ)。『吉野山から山上ヶ岳(大峯山)に至る金峯山は、万葉の昔より聖地として知られ、多くの貴族が足跡を印している。白鳳年間(7世紀末)修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)がこの金峯山を道場として修行され、蔵王権現を感得し、そのお姿を桜の木で刻み、お堂を建ててお祀りした。これが蔵王堂であり、金峯山寺の草創である。以来、金峯山は、修験道の根本道場として広く万人に尊崇され、多くの修行者が宗派を超えて入山修行している。』(奈良ネットのHPよりhttp://www.naranet.co.jp/kinpusenji/

山の神様と一体になるという修験道の聖地での断食修業ときいて、心が動かないはずがありません。吉野・熊野が大好きな私にとって、桜の開花が近づいたこの時期のこの場所での断食修業でどんな体験が出来るのか、わくわくドキドキしながら参加しました。

山伏と松明というわけで、後編は断食あけの食事からお話しましょう。
3日間の断食が終わり、最後の勤行を終えると、参加者全員で待ちにまった断食あけの食事の準備です。このときの皆さんの行動の早いこと!!体力もなくなって起き上がるのも億劫だったはずなのに、みんな厨房に入り、テキパキ働きます。まず、10数本の大きな大根の皮をむき、大きなお鍋で煮ます。1本の半分が一人分。最初に、この何も味つけされていない大根の煮汁に梅干を入れて、どんぶりに3杯飲み干します。3日間何も食べていないせいか、この大根の煮汁のおいしいこと!!何の味付けもされていないのに、敏感になっているのか、大根の甘さがふわ~っと口中に広がります。けれど、これをどんぶりに3杯となると、どんなにおいしくてもキツイです!この煮汁だけで、おなかがごろごろします。当然、途中でトイレに行きたくなります。本来ならば、食事中にトイレに立つのはお行儀が悪いと叱られるところなのですが、ここでは〝出す〟ために食べているので、逆にトイレに行かねばなりません。

その後、大根に味噌をつけて、1/2本を食します。これも半端な量ではありません。そして、オレンジジュース、食パン1枚、人参1本、きゅうり1本、バナナ1本、ヨーグルト(フルーツ入り)、プロセスチーズ1個、羊羹1切れをいただきます。もちろん、完食を目指します。飲み物は、あたたかいチャイが用意されており、何杯でもお変わりできます。

さあ、大変!!人参、きゅうりは味噌をつけるか、そのまま生でいただきます。パンはバターなどつけないでそのまま。羊羹はゆるくなった便を固める役割があるそうです。久しぶりの食事を楽しむ…というものではなく、最後の修業として、体の中のものを出し切るために、食べるのです。ここでの断食はあくまでも修業であって、ダイエットを目的としたものではありません。ただ、何度か繰り返すことで、からだの体質を変える効果はあり、アトピーの体質改善にも効くというので、私が参加したときもアトピーに悩む青年が参加していました。ヘビースモーカーの夫がこれを機に一切煙草を吸わなくなったのには驚きました。これは思いがけない効果でした。すでに丸3年の歳月が流れましたが、あれ以来彼は一本も吸っていません。すべてを食し、無事に宿便を出し、体の中を空っぽにしたら、終了。皆さんのホッとした笑顔が印象的でした。

3日間お風呂にも入っていないので、お寺のすぐそばにある温泉に吉野の山々を見ながらゆっくり浸かり、中も外も綺麗になってスッキリして帰京します。お寺での修業はこれでお終いですが、この後1週間、食事制限があります。実は、宿便がでた後の腸は赤ちゃんのおなかの中と同じくらいきれいなので、暴飲暴食は体調を崩します。まず、断食あけ後3日間は酒、肉類、そば、うどん、パン、油モノはだめ。もちろんタバコ、コーヒー、刺激物もダメです。4~7日目は、基本的には普通食に戻して良いのですが、酒・肉類、タバコ、コーヒー、刺激物はまだダメ。ちなみに1週間は性交渉もダメです。

お稲荷さんというわけで、こうして改めて書いてみると、よく出来たなーと我ながら感心するのですが、私は2回参加しました。一度参加すると癖になるかも。夫は二度といきたくないと言っていましたので、二度目は私だけ。また時間が合えばぜひ参加したいと思っています。 一見かなり苦しい修業のようですが、断食後は少しの食事で満足できるので、そんなに苦痛ではありません。また、質素な食事でも充分に体力を補えることを学び、達成感もあります。からだが敏感になり、山の空気、緑や雨の匂いが心地よく、これまでの無駄の多い暮らしを実感します。心も身体もきれいになって、少しシャープになった新しい自分に出会うと、世の中も違って見えてきます。ぜひ、一度お試しください。

【オススメ参考資料】
①「からだでつかむ仏教」正木晃著(佼成出版社/2000円)
私が参加した修業は野口法蔵先生の断食修業で、こちらに詳しく載っています。

②「週末断食 -空腹から見えてくる『空』の思想」宗教学者・久保田展弘著(マガジンハウス/1500円)
〝飽食で見えなかったもの、空腹で見えてくるもの〟について、ご自身で時々自宅で自主的に行う「週末断食」の方法が書かれています。まず、自分で一日断食からはじめてみるのもよいかも。

 

コメント

鎮守の森の大ファンです。毎回どのようなテーマか楽しみに待っています。夫と二人で近所の神社から勉強中です。来年は、伊勢神宮へ行く計画をしています。今後も、鎮守の森で勉強させてください。

投稿者 宮本 忍 : 2007年05月15日 14:00

宮本様 メッセージありがとうございます♪
とても嬉しいです(^^)来月、私がご案内する「はじめてのお伊勢参り」があります。詳細はこちら↓
http://www.knt.co.jp/branch/0282/hajimetenoise/
来月、夏至の頃にはちょうど二見ヶ浦の夫婦岩の間から朝日が昇り、運がよければそこから富士山も見えます。伊勢が神の国と呼ばれる理由の一つです。
また、今月31日には飯田橋の東京大神宮で「はじめてのご遷宮フォーラムVol.5」を開催いたします。
今出ているメトロガイドにも案内がでていますが、私が主宰している「NPOちんじゅの森」と東京のお伊勢さん「東京大神宮」の共催です。詳細はこちら↓
http://www.chinju-no-mori.or.jp/juku/20070531-event/index.html
赤福もご用意しています。ぜひ、ご参加ください♪

投稿者 中尾伊早子 : 2007年05月15日 17:41

大根1本、人参1本、きゅうり1本って・・・。やってみると、なかなか食べれないですよね。普通。でもその後、体には良い事もいっぱいあるみたいで。おそるべし断食効果!!

投稿者 岩崎由江 : 2007年05月16日 10:31

岩崎由江様
ほんと、断食恐るべし…です。大根、人参、きゅうりは、普段はなかなかそのままでは食べられませんが、3日何も食べていないとおいしく感じて普通に食べてしまえるから不思議です!
ちなみに、私は子供のころからきゅうりが苦手なので、これだけは勘弁していただきました…(^^;)

投稿者 中尾伊早子 : 2007年05月16日 11:06

絶対断食なんてしたくないと思いつつ、中から美しくなると言う事を50を前にして考えると必須ですね!これこそ「アンチ・エージング」への第一歩だと思います。長年使い古した内臓のデトックスはこの修行が最適かも・・・。うるさい外野手が静かになったら考えます!!!

投稿者 中村有羽子 : 2007年06月29日 19:06

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