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第二回 初詣

 
エッセイスト 中尾伊早子
 
はじめに

むかしむかし、日本の人々は、自然と共に暮らしていました。
おじいさんは山へ柴刈りに行き、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
山には森があり、水が湧き、木の実やキノコ等の食べ物があり、植物は薬になるものもありました。木は家を建てる材木になり、火を焚く燃料にもなりました。
今のように、スイッチ一つで電気がつき、蛇口をひねれば水が出るという生活ではありませんでした。
 人間が生きるために必要なものを与えてくれる山=森にはきっと神様がいらっしゃるのだと人々は思いました。だから、田畑を耕す為に森を切り開いても、必ずその一部を残し、感謝をする場所として、長く守りつづけてきたのです。
 「鎮守の森」とは、そうして自然に生かされていることを知っていた古の人々の智慧によって守られてきた大切な場所です。
今も、全国に残る鎮守の森。
神社とはなんなのか、そこで行われるお祭りにはどんな意味があるのか…そこには、四季があって、自然豊かな国だからこそ生まれた〝日本がもっと好きになる〟物語がたくさん詰まっています。そんな物語を一つ一つ紐解いて、お伝えしていきたいと思います。

 

もういくつ寝ると~♪ お正月…ということで、今回は、初詣にちなんだお話をしましょう。
お正月というのは、「歳神様」を迎えるお祭りです。

歳神様というのは「祖先神」のことで、大晦日の夜にどの家にもやってきて、福を授けて年を取らせてくれるのです。〝年をとる〟というと、「老ける」というマイナスなイメージを持ちがちですが、本来は新しいエネルギーをいただいて魂を蘇らせるという意味があります。お正月を迎えると、毎年、誰もが「今年こそは・・・」と目標を立てる気持ちになるのは、やはり、歳神様が魂をよみがえらせてくれているのかもしれませんね。もちろん、そのあとは自分の問題ですけど・・・

玄関に立てる門松はその祖先神がちゃんと迷わずに家に来てくださるように目印となり、白くて丸いものには神様が宿るということで鏡餅を飾り、お雑煮を食べたりします。ちなみに、注連縄をつくる藁は草鞋として履物になり、蓑として身にまとい、稲や麦を食べ、屋根の材料にもなりますよね。人間の衣食住すべてに関わる優れものはもちろん神様が与えてくださったもの。だからこそ、聖域を示す重要な役割を果たすことになったとのこと。この理由は後付で、本当は藁が身近にあっただけのことかもしれません。でも、ただ食べるだけでは終わらせずに、色々なものに利用して神様に感謝をした古の人々の知恵を感じますよね。ちなみに、私が好きな注連縄は伊勢の「笑門」というお札がついた注連縄です。いかにも福が来そうでしょ。

さて、歳神様をお迎えして、今度は初詣。
初詣は氏神様に新年のご挨拶に伺います。
昔は魂を象徴するものとして石を奉納していたのが、いつの時代からか、丸い貨幣を治めるようになったのがお賽銭。たまに、鳥居の上に投げた石がいくつも乗っかっているのを見かけて不思議に思ったことがありましたが、それはまだ石を奉納していた頃の名残かもしれません。そういえば、賽の河原も細かい石がたくさん積まれていますよね。これも、やはり子供たちの霊が魂を納めに来ているのかもしれませんね。

初詣といえば、夫の実家が鈴鹿にあるので、お正月に車で帰省していた頃、ちょうど鈴鹿インターを降りてすぐのところにある『椿大社』によくお参りに行きました。
三重県の一之宮で、とても立派な神社です。参道に入ってしばらく行くと、右手に向かう細い小径があるので入ってみたのですが、ただ林になっていて、どこにもつながっていませんでした。あれ?これは何の道かな…?と不思議に思っていたのですが、ある年の大晦日、夜中に東京を出て、日の出前に鈴鹿に着いたときのこと。せっかくなので…と暗いうちにお参りに寄ってみると、ちょうどその時に太陽が昇りはじめ、なんと、以前から不思議に思っていた小径に一直線に朝陽が射したのです。鳥肌が立ちました。
偶然なのか、それともやはり、あの道は朝陽の通り道なのか…
神社の方に確認したわけではないので本当のところはわかりませんが、太陽の道であってほしいなーと密かに今も思っています。

私は学者ではありませんので、私がここでお話しすることは、学術的な裏づけはありません。あくまでも人から人へと語り継がれた庶民の会話の中で得た知識です。それはおばあちゃんからであったり、田舎で出会ったおばさんから教わったり・・・伝統という格式ばったものではなく、普通に生活の中で受け継がれてきた物語です。柴刈りにいったり、川に洗濯にいったり、実際にあった人々の生活の物語が〝民話〟や〝昔話〟として語り継がれていくように、時代の変化の中でも変わらない素敵な日本人の知恵や技術を、「鎮守の森物語」として語りたいと思っていますので、地域によって解説が異なる場合もあります。そんなときは、ぜひ、うちではこんな風に教わったとか、こんな意味もあるんだ・・・と、教えていただければ身近な小さな物語もどんどん深く楽しくなると思います。皆さんと一緒に「素敵な日本」をみつけるコーナーにしたいと思っていますので、来年もよろしくお願いいたします。

 
中にはこんな手水舎もありますが… 
(岩木山神社)
では、最後に、神社の正式な参拝の仕方をお伝えしましょう。
まず、手水舎で身を清めましょう。柄杓で一杯の水をすくいます。その水で手を洗います。左手、右手の順に少しずつの水をかけます。次に、左の掌に柄杓の水をためて口をゆすぎます。最後に柄杓をたてに持ち、残りの水を枝に滴らせて持つところを洗います。柄杓はみんなが使うものなので、直接口をつけることはせず、また、次に使う人のために自分が持ったところを洗って元の位置に戻します。このすべての行為を一杯の水で済ませるのがポイントです。自分だけでなく、他人のことも考えた素敵な作法ですね。ぜひ、このお正月から試してみてください。背筋がきりっとしますよ!
 
参拝は、お賽銭を入れたら、鈴を鳴らします。鈴は、神様を呼び出すためです。
そして、二拝二拍手一礼。あれもこれもと欲を出さず、一番祈りたいことだけを選んで、それは自分の希望であることを自覚して、それを一年の目標に、素敵な一年を過ごしましょう。
そうそう、狛犬にはいろんな種類があることをご存知ですか?
 
赤坂の日枝神社の狛犬さんは猿、青森ではねずみの狛犬さん、秩父の方では狼の狛犬さんも見ました。ということは、来年の干支「猪」が狛犬の神社もあるかも・・・と思って調べたらやはりありました。

岡田神社(おかたじんじゃ)
・・・西宮市小松南町2-2-8
護王神社(ごおうじんじゃ)
・・・京都市上京区烏丸通下長者町下ル西側桜鶴円町
http://www.gooujinja.or.jp/

猪年生まれの方は、験かつぎに行ってみてはいかがですか?

では、良いお年をお迎えくださいね。
来年もよろしくお願いしまーす。

こちらも岩木山神社の狛犬さん。あまりみないお顔でしょ!
 

コメント

今年も神社には、節目節目にお参りしました。今回の初詣を読まして戴き、知らなかった事がいくつか有り参考になりました。
年の瀬、神社に今年のお礼にお参りしょうと思っています。来年も初詣で一年がスタート、来年もこのエッセイ楽しみにしております。

投稿者 菊地友子 : 2006年12月28日 18:13

菊地様
コメントありがとうございました。
すでにこのエッセイを書き始めて4ヶ月がすぎました。
今年は旅が多くなりそうなので、遠方の神社にもお参りできそうで楽しみです。またぜひ、覗いてください。

投稿者 中尾伊早子 : 2007年03月05日 12:10

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